『夏の心臓』制作ノート
すぐ隣で誰に向けとはなしに、さりげなく歌われているような歌が自分は好きだ。
ステージ上から大勢に投げかけられるわけでもなく、目線を交わし合ってるわけでもなく、ただ何となく同じような方向を見ている気配があるような。
もちろん大勢を動かすような歌はそういった親密感のようなものを往々にして内包しているものだが…。
このアルバムは2018年初頭より構想が練られ、4月にレコーディング、その後ミックスや曲順の調整に数か月時間を費やし、2018年8月の夏真っ只中に完成した。
ここで試みたかったのは、一人でバンドサウンドを形作ること。
そこでいつもは打ち込みでやっていたドラムを、自分で生でレコーディングすることに決めた。最初に自宅でアコギのベーシックトラックを録った後、スタジオに入り一人でドラムの前にマイクを立て、演奏し、確認をし、という孤独な作業を何回か繰り返した。
自分にとって初のドラムレコーディングであったが、以前より遊びでたまにドラムに触っていたため、何とかなるだろう、という計算はあったが、実際やってみると大変で、なかなかに苦戦した。
が、それでも無事に1か月ほどでレコーディングを終了した。
拙いまでも、何とか全体を通して、自分らしい作品になったので今までで初めてといっていいくらいの満足感はある。
昔からずっと作りたかった、いなたさや開放感があるような、フォーキーでカントリーっぽい質感のある音楽に自分なりに近づけたのではないか、と思っている。
夏のまるで何もしたくなくなるような気怠さをどこかしら感じていただけたら幸いです。